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2021.06.19

天井高のはなし

今回は天井高についてのお話です。よく「天井は高い方がいい!」という声を聞きます。天井が高いと開放的でゆったりとした空間になりますよね。TVのCMでもハウスメーカーが天井高2.7mでプレミアム感を演出しています。日本の住宅の一般的な天井高は2.4mです。私も仕事でいろんなお宅におじゃましますが、戸建て住宅、マンションを問わず2.4m以上あれば「高い」、それ以下であれば「低い」とご説明しています。はたして天井は高ければ高いほどいいのでしょうか?

そもそも天井高2.4mの理由は?一番の理由は建築建材のサイズが関係します。日本の建築材料は「尺貫法」の単位でサイズが決まっています。基準となる寸法は1尺で、メートルに直すと303mm。壁を構成するプラスターボードのサイズは3尺×6尺(910mm×1820mm)とか3尺×8尺(910mm×2430mm)です。つまりお家のサイズは30cm単位ですと材料の無駄が出ないという事です。ちょっと話がそれましたが、ちなみに建築基準法が定めるお部屋の最低天井高は2.1mです。

それでは天井が高い事のメリットを考えてみましょう。冒頭にもお話しましたが、何といってもお部屋の解放感ではないでしょうか。最近ではリビングの天井が吹き抜けになっているお宅も多く目にします。採光も取りやすいので大きな窓を付ければ広さだけでなく明るさも確保できます。いいことづくめに思われがちな高い天井ですが、デメリットも考えてみます。私もそうですが「和室は落ち着くなぁ~」とか「小さい頃からドラえもんのように押入が好き!」という方は天井が高すぎるとソワソワして何となく落ち着かないのではないでしょうか。あと天井が高いと冷暖房費が多くかかったり、先ほどお話しました建築費のコストも上がります。また廊下やトイレなど狭い空間の天井が高いと壁の圧迫感が生まれかえって狭く感じてしまうことも。

結局、高い天井と低い天井はどちらが良いのでしょうか?結論として天井高はメリハリが大事なのではないでしょうか。「リビングもキッチンも廊下もみんな開放的に高くしたい!」なんてどこもかしこも高くしてしまうとかえって高さを感じられません。

上の写真は自宅BELLS HOUSEの廊下です。玄関を入って階段下の廊下を抜けて2階のLDKに行きます。階段下は通路の真ん中で2m無いくらいの高さです。ちなみに廊下の天井高は2.2mです。

低い廊下を潜り抜けて2階に上がると開放的なダイニングが広がります!2階に上がった瞬間「わぁ~開放的!」となりますよね。このように、「天井はどこもかしこも高ければよい」というわけではありません。天井の高さをあえて下げ、高さに変化をつけることで、高い天井がより活きてくるのです。

更にこちらはリビングです。天井がグッと抑えられています。何だかこじんまりとして落ち着きますよね。建築基準法の最低天井高2.1mです。

リビングから吹抜けのダイニングを見るとこんな感じです。リビングが低い分、吹抜けがより開放的に感じますね。自宅は「朝陽を浴びながら朝食をとりたい!」という思いで吹抜けの開放的なダイニングにしました。その代わりリビングは天井をグッと下げて落ち着きのある空間に。その逆のパターンもあります。食事は落ち着いた雰囲気のダイニングで、リビングは天井を高くとって開放的にしたい。いずれにしてもメリハリが大事です。

さてこちらは只今行っております戸建てリノベーションの工事前の写真です。和室二間に広縁と廊下を繋げて広さ26畳のLDKに改装する壮大なプランです。ここの現場でもリビングスペースの天井をグッと抑えて落ち着きのある空間に演出します。

完成後のイメージです。天井が低いだけでなく、撤去出来ない柱に囲まれて、何とも心地よい囲まれ感なリゾートライクなリビングです!広いお部屋なので均一な天井高よりもメリハリが効いて素敵ですね。こちらの現場の様子は機会を見てまたご紹介したいと思います。

いかがでしたでしょうか。普段お部屋の天井高なんてなかなか意識しないかと思います。自宅を見学に来られた方々も自分から説明しない限り、事務所も含めて天井が低いとはなかなかお気づきになりません。ただ何となく落ち着くわね、とか居心地がいいわね、とおっしゃっていただけます。これは他にも要素があるかもしれませんが、間違いなく天井高も大きく影響しています。これからリフォーム・リノベーションをご検討されるのであれば、是非とも参考にしていただければと思います。