ブログ
BLOG
2016.11.30
多能工とは?
皆さん、「多能工」という言葉を聞いた事がありますでしょうか?生産・施工の現場において、1人が一つの職務だけを受け持つ単能工に対し、1人で複数の異なる作業や工程を遂行する技能を身につけた作業者の事を「多能工」と呼びます。「多能工」の仕組みを考案したのはトヨタ生産システムを体系化したトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)の大野耐一元副社長だと言われています。モノづくりにとどまらず、今やサービス業の現場でもこの「多能工」的人材が評価されるようになっていますが、リフォーム(建築)業界でいうと、大工、水道、電気、内装などの専門職能を1人で兼任できる職人さんといったところでしょうか。
例えば和式(通称汽車便)トイレを洋式トイレにするリフォームを例に挙げてみましょう。まず既存の便器、床、壁のタイルを解体し、給排水の切り回しを行う水道職人が入ります。続いて壊した床や壁を大工が作り直します。温水洗浄便座用のコンセントがない場合はこのタイミングで電気の職人も手配します。さらに壁紙や床の貼り替えを行う内装職人が入り、最後に再び水道の職人が来て便器を取付けます。出入口のドアを交換するのであれば建具の職人も登場、といった感じで畳一畳あまりのスペースですが5業種の職人が入れ代わり立ち代わり作業して工事を完成させていきます。
おトイレですのでなるべく短期間で使えるようにしなくてはなりませんので、時間的なロスが無いように工事を段取りするのがポイントになります。自分がこの業界に入った当初、「まずは和式から洋式トイレのリフォームを完全にマスターしろ。」と先輩からよく言われていましたが、畳一畳のスペースにリフォームのノウハウが凝縮されているという事ですね。今ご紹介しました内容を全て一人でこなすというのはなかなか難しいですが、一人の職人が本職以外にもう一つ兼任出来るだけでも工期が短縮され工事費圧縮にもつながります。自分にとっても工事の段取りが楽になり、現場管理の面でも別の職人が来るたびに立ち会いををしていたところ、その頻度も減らすことが出来、効率よく現場を回せます。
近年、建築業界では職人不足が懸念されています。特に大工は深刻で、柱を立てて一から家を建てられる職人が年々減っています。工場で箱を作り現場まで搬入し、内装(造作)大工と言われる職人がお部屋の中を仕上げていくといったやり方が増えてるのも要因の一つです。ちょっとお話がそれてしまいましたが、この職人不足の流れを受けて国も動き始めています。国交省は「多能工」を「マルチクラフター(仮称)」として育成しようと議論を進めており、成功企業の取り組みなどを今年度中に公開する考えだそうです。民間企業の中には「学校」を作るケースも出てきています。その学校を卒業するとトイレ、キッチン、洋室、洗面台の工事を一人でこなせるというのです。今後は水まわり設備の交換を中心に「多能工」職人がますます活躍の場を広げていくことでしょう。