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断熱と気密を考える

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断熱とは

現代のお家の性能には大きく3つの要素があります。①耐震性②省エネ③長持ちです。近年、国土交通省が行っている「住宅エコポイント」もこれら一定の性能を有する新築やリフォームにポイントが与えられる制度で、一般の方にもお家の性能、特に耐震性や省エネの意識が一段と高まっています。今回はその中でも②省エネ→断熱と気密のお話です。
住宅の省エネを語るうえでキーワードになるのは「断熱」です。「断熱」とは外部との熱の出入りを遮る事で、住宅でいうと、壁、床、屋根、窓などを通しての熱の移動を少なくする事です。今でこそ断熱が当たり前になっていますが、今からほんの30年ほど前までは、断熱をほとんど気にせず家が建て続けられていたんです。高度成長期と呼ばれる1954年から1973年までの約19年間は、住宅の需要が多く、「質より量」で断熱に対する基準もなくたくさんの家が建てられました。壊しては建て替えるといったスクラップアンドビルドという言葉もその時代の象徴です。それから時は過ぎ、1989年に住宅金融公庫融資で初めて「断熱」が義務づけられました。ただ「どうして断熱を入れないと公庫融資を受けられないの?」とか工務店も「これからは断熱をちゃんと入れないとダメみたい」など当時の認識はこの程度のものでした。

 

なぜ断熱が必要に?

ではどうして断熱が必要になったのでしょうか。1973年に第一次オイルショック、1979年に第二次オイルショックが起こり、日本全国のスーパー店頭からトイレットペーパーや洗剤が消えます。第一次は1973年の第四次中東戦争、第二次は79年のイラン・イラク戦争をきっかけに起こり、私たちは石油自体が無尽蔵ではないことを思い知りました。
また時を同じくして、1970年代に世帯普及率7%程度だったエアコンも、1980年代には40%に迫る勢いで快適な生活家電の普及が促進されていきます。そんな中で地球温暖化の問題が提起されるようになります。この頃から、資源は有効に活用し、「省エネ」を促進していかないと将来大変な事になるという事で、やっと「断熱」を意識するようになります。
そして1980年に「省エネ法」が制定され住宅の断熱化が普及し始めました。

1973年の第一次オイルショック。トイレットペーパー騒ぎのパニックが全国を襲いました。

 

断熱の副作用

オイルショックをきっかけに世の中は一気に「省エネ」がブームとなります。住宅業界でも「断熱性を高めて省エネを推し進めよう」という機運が高まります。そんな中、事件が起こります。「断熱化」を進めたゆえに、その盲点として「内部結露」という新たな問題が浮き上がります。1980年、北海道で起こったナミダタケ事件です。新築3年目の住宅の床下にナミダタケというノドタケ科の木材腐朽菌が発生し、床が腐り落ちてしまったのです。被害は北海道内に拡がり、マスコミでも大きく取り上げられました。
当時はまだ家の断熱化と言えば、気密や防湿といった考え方は重要視されず、天井・壁・床に大量のグラスウールを詰め込んだだけのモノでした。断熱材をいくら厚くしても、あまり効果が無いばかりか、内部結露が発生し、構造材を腐らし重大な被害を及ぼす事が分かってきたのです。

床下での結露水が、グラスウールに吸収され、木材を濡らし大量のナミダタケが発生しました。

ナミダタケ事件を契機に、室内の湿った空気を断熱材の中に侵入させないようにする「気密」の重要性が高まってきます。そもそも「気密」とは?密閉して気体の流通を妨げ、気圧の変化の影響を受けないようにする事です。住宅でいうと、家の隙間をなくして室内の空気をどれだけ住宅内に閉じ込めることができるかという事です。気密性の高い家は室内と室外の空気が分断され、室内の空気が外に漏れにくく、室外の空気が室内に入り込みにくくなります。逆に気密性の低い家とは隙間が多く室内外の空気の出入りが多い家と言えます。ナミダタケ事件も、家の気密性が低く室外の冷たい空気が室内に入り込み、内部結露を起こしてしまったんですね。

 

省エネ基準

気密の重要性をお話してきましたが、1999年、次世代省エネ基準が創設され、断熱性能を表すQ値と、気密性能を表すC値が、日本全国各地域に合わせて明記されるようになります。更に東日本大震災後の2013年に省エネ法の改正(平成25年基準)、2016年に建築物省エネ法(平成28年基準)と時代と共に省エネルギーの法改正が行われます。ただ「断熱」の基準というと1999年の次世代省エネ基準から変わっていないんです。
そして今年、2020年にこの次世代省エネ基準が義務化になる予定でしたが、先送りになってしまいました。もともと、大規模な建築物から省エネを進め、最終的に2020年以降は、省エネ基準を満たさなければ住宅の建築が許可されないという事でした。それが省エネ基準を満たさない家を建ててもいいから、家を建てられる人に省エネ基準の説明だけをきちんとするように、という甘い内容にとどまりました。20年以上前のレベルの低い省エネ基準ですら義務化できないとはどういうことなのでしょうか。

2020年省エネ基準義務化!(BELLS LETTER Vol.25)

まず挙げられるのは、現段階で新築住宅の省エネ基準適合率が約6割ほどと低水準である事。これは省エネ基準に習熟していない中小工務店や設計事務所が相当数存在すると推測されます。きちんとした知識に基づき、正しい施工を行わなければ高断熱住宅は建てられません。またコスト面から考えても、省エネ化は費用がかさみます。基準を満たした断熱材を使用し、気密テープでしっかり気密、といった具合に使う建材のコストもさることながら、施工も通常より手間がかかります。
また1999年の次世代省エネ基準で定められた気密性能C値ですが2013年の省エネ法改正で削除されてしまいます。これは気密性能は現場での測定で、職人の技量により良くも悪くもなり、建物の仕様として数値を管理できないという事、また一番の原因は大手ハウスメーカーなど住宅を取り巻く様々な関連業界の力が働いたというのがもっぱら業界の一般的な認識なんです。ナミダタケ事件で気密の重要性が分かったにもかかわらず、何だか腑に落ちませんね。ただ省エネ基準に無くても気密が重要なのに変わりありません。

 

まとめ

省エネ(断熱と気密)の歴史を端折ってお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。省エネ基準を満たした新築棟数が全体の6割というお話をしましたが、リフォーム業界ではどうでしょうか。省エネリフォームの意識は高まっているものの、リフォーム業者によって温度差があり、断熱施工に対する認識はまだまだかと思われます。
昨年自宅の新築を手掛けて、初めて「断熱・気密」を家全体で考える経験をしました。リフォームでは部分的な工事が多く、断熱材の入れ方ひとつとっても、マニュアル通り施工するものの、その意味を完全に理解して行うものではありませんでした。それが今回、建物の骨組みから施工に携わった事と、その家に実際住んでみて感じた断熱・気密の効果、重要性により、より理解を深め、今回記事にしようと思いました。
省エネ性能は耐震性能と同様、目には見えるモノではありませんが、耐震性能と違うのは身体で感じる事が出来ます。この自宅の経験を活かして皆さんにより分かりやすく「断熱・気密」をお伝えしたいと思います。

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